「DHA・EPAは体に良い」と聞いていても、実際にどんな効果があるのか、信頼できる根拠はあるのかが気になる方も多いと思います。
このコラムでは、DHA・EPAに関する代表的な研究結果や科学的な知見をもとに、どのような実力があるのかをご紹介します。
DHA・EPAといえば、「血液をサラサラにする成分」として知られています。
これは1980年代、イヌイット民族の食事研究から発見されたことがきっかけです。
彼らは脂質の多い魚を常食しているにもかかわらず、心疾患の発症率が極めて低いことが明らかになり、そこに含まれていたのがDHA・EPAだったのです。
その後の多くの研究で、EPAには血小板の凝集を抑えて血液を固まりにくくする作用があり、DHAは中性脂肪や悪玉コレステロール(LDL)の低下に関与していることがわかってきました。
日本の厚生労働省も、DHA・EPAを「積極的に摂取すべき脂肪酸」と位置付けています。
実際、DHA・EPAの摂取と心血管疾患リスクの低下には関連性があるとされており、国内外で数多くの研究が行われています。
例えば、国内の大規模な臨床試験「JELIS(ジェリス)試験」では、EPAの高用量摂取が心筋梗塞や狭心症などの発症リスクを有意に減少させたというデータが報告されました。
この結果は、サプリメントによる予防医療の可能性を広げるきっかけとなり、DHA・EPAの信頼性を高める重要な根拠のひとつです。
最近では、DHA・EPAの「脳への働き」も注目されています。
DHAは、脳や神経細胞の構成成分のひとつで、特に加齢にともなう認知機能の維持に関係しているといわれます。
実際、軽度認知障害(MCI)のある高齢者にDHAを補給した研究では、記憶や学習に関する脳機能の指標が改善したという報告もあります。
また、EPAには神経伝達物質のバランスを整え、気分の安定に関与する可能性があるとして、うつ症状への改善効果も研究されているのです。
現代の日本では、肉中心の食生活やストレス過多なライフスタイルが広がりつつあります。
その結果、動脈硬化や高血圧、うつ、不眠といった慢性的な健康トラブルを抱える人が増えています。
そうした中で、DHA・EPAは「病気になってからの対処」ではなく、“病気になる前に備える”予防栄養として注目されています。
定期的な摂取で、血液・脳・心のバランスを整える。
それがDHA・EPAに期待されている現代的な役割なのです。
DHA・EPAは、単なる“魚の栄養”という枠を超え、 科学的にも「血液」「脳」「心」にポジティブな影響を与える栄養素として確かな評価を受けています。
研究データにもとづいた機能が明らかになってきた今、
DHA・EPAは「本当に効くの?」ではなく、「どう取り入れるか」を考える時代になってきているのかもしれません。